青空AI短編小説

星降る夜の契約者

登録日時:2025-08-25 08:50:34 更新日時:2025-08-25 08:51:45

第一章 隕石の夜


ゲームに熱中していた真夜中、真冬の澄んだ空気を震わせるような轟音が裏山から響いた。窓の外を覗くと、しんと静まり返った夜の闇に、不気味な煙が立ち上っている。好奇心に駆られた俺は、パーカーを羽織り、懐中電灯片手に裏山へと向かった。


山道を進むと、すでに数十人の野次馬が集まっていた。皆、ざわめきながらスマホを空にかざしている。その人だかりの隙間から見えたのは、黒く焦げたクレーターと、その中心で微かな光を放つ、こぶし大の岩だった。


「どうやら隕石が落ちたらしい」


誰かがつぶやいた。この小さな田舎町に、宇宙の遥か彼方から飛来した岩。その非日常的な出来事に胸が高鳴るのを感じた。


しかし、その岩はただの石ではなかった。近付いて見ると、表面には奇妙な文様が浮かび上がっており、触れると温かい。その時、岩から放たれた光が、俺の腕に触れる。次の瞬間、俺の意識は遠のいていった。


目が覚めると、俺は自分の部屋のベッドにいた。夢でも見ていたのかと首を傾げたが、腕に巻かれた包帯を見て、それが現実だったことを知る。包帯の下には、隕石に刻まれていたのと同じ文様が皮膚に刻まれていた。


そして、その日から俺の日常は一変する。


第二章 異能の覚醒


「おはよう、拓也」


幼なじみの美月が朝食を作ってくれている。両親が出張でいない間、毎朝こうして面倒を見てくれるのだ。


「ありがとう。って、美月?」


なぜか美月の表情が見たことのない複雑さを帯びていた。心配そうに眉をひそめ、時折俺の腕の方に視線を向ける。


「昨夜のこと、覚えてる?」


「隕石が落ちて、それに触れたら気を失って……」


「そうじゃなくて、その後」


その後? 俺は首をかしげた。記憶にあるのは、隕石の光に包まれて意識を失い、気がついたらベッドにいたことだけだ。


「拓也、あなた昨夜、宙に浮いてたのよ」


美月の言葉に、俺は箸を取り落としそうになった。


「は?」


「隕石に触れた後、突然あなたの体が光って、地面から三メートルも浮き上がったの。みんなパニックになって、救急車が来る前に私があなたを家まで運んだのよ」


嘘だろう。そんなSFじみた話があるわけが——


その時、俺の感情の高ぶりに反応するように、腕の文様が青白く光った。そして、気がつくと俺の体は椅子から浮き上がっていた。


「うわあああああ!」


俺は慌てて両手を振り回し、なんとか椅子に着地した。美月は呆れたような顔でため息をついている。


「やっぱり本当だったのね。拓也、あなた超能力者になったのよ」


第三章 秘密の代償


学校では隕石落下の話で持ちきりだった。しかし、俺に超能力が宿ったことを知っているのは美月だけ。俺たちは人目のつかない屋上で、この力について話し合った。


「でも、なんで俺だけなんだ? 他にも隕石に触った人はいたはずなのに」


「それがね……」美月が携帯を取り出し、ニュースサイトを見せてくれた。「隕石に触れた人は全部で五人。でも、あなた以外の四人は……」


画面には病院の映像が映っていた。四人の男女が意識不明の重体で運ばれたという。


「みんな、生命に関わる状態なの。でも拓也だけは……」


俺は腕の文様を見つめた。他の人たちには、この印はついているのだろうか。


「ねえ、拓也」美月が不安そうに俺の袖を掴む。「この力、使わない方がいいと思う。だって、他の人はあんな状態になってるのよ? もしかしたら——」


「副作用があるかもしれない、ってことか」


その時、俺たちの会話を遮るように、空から声が降ってきた。


『契約者よ』


俺たちは空を見上げた。そこには、人の形をした光る存在が浮かんでいる。


『私はアーキテクト・ゼロ。君に力を与えた者だ』


「え、ちょっと待て! あの隕石って——」


『正確には隕石ではない。私たちの世界から送り込まれた、選別装置だ』


選別装置?


『君たち人類の中から、私たちの戦争に参加できる者を探していた。そして君は、その適性を示した唯一の人間だ』


戦争? 俺の頭の中で、嫌な予感がぐるぐると渦を巻く。


『三日後、敵が この星を侵略しにやってくる。君には、その時戦ってもらう』


「断る!」


俺は即座に答えた。なんでいきなり宇宙戦争に巻き込まれなきゃいけないんだ。


『断れば、君の大切な人たちが犠牲になる。まずは、そこにいる少女から』


アーキテクト・ゼロの指が美月を指すと、美月の体が金縛りにあったように硬直した。


「美月!」


『選択の時間をやろう。三日後の夜明けまでに決断を。戦うか、愛する者たちの死を見るか』


光る存在は、そう言い残して消えた。美月の体から力が抜け、俺の腕の中に倒れ込む。


「拓也……どうしよう」


俺は美月を抱きしめながら、腕の文様を見つめた。この力は、祝福なんかじゃない。呪いだ。


でも、美月を守るためなら——。


第四章 選択の時


三日間、俺は悩み続けた。超能力の練習をしながら、本当に戦うべきなのかを考え抜いた。浮遊能力だけでなく、念動力や、文様が光ると周囲の物質を操る力まで使えるようになっていた。


しかし、力を使うたびに体力を激しく消耗し、時には鼻血を出すこともあった。他の四人が意識不明になったのも、きっとこの力の代償なのだろう。


そして約束の夜明け——。


『時が来た。君の答えを聞こう』


アーキテクト・ゼロが再び現れた。今度は学校の屋上だった。美月も一緒にいる。


「俺は……」


その時、空に巨大な影が現れた。まるでSF映画に出てくるような、巨大な円盤型の宇宙船だ。


『敵だ! 早く決断を!』


宇宙船から、触手のような触手を持つ異形の化け物たちが降りてくる。街の人々が悲鳴を上げて逃げ惑っている。


「拓也!」美月が俺の手を握る。「私は、あなたがどんな選択をしても支えるから」


俺は美月の手を握り返し、決意を固めた。


「分かった。戦うよ。でも条件がある」


『何だ?』


「美月も、この町の人たちも絶対に守る。それと、戦いが終わったらこの力は返してもらう。俺は元の普通の高校生に戻りたい」


『……承諾しよう』


俺は腕の文様に手を当てた。青白い光が全身を包み、体が宙に舞い上がる。


「行ってくる、美月!」


終章 星降る朝に


戦いは、思っていたより激しかった。


念動力で瓦礫を操り、浮遊能力で空を駆け回り、文様の力で敵の攻撃を防ぐ。だが、敵の数は多く、俺の体力は急速に削られていく。


『頑張れ、拓也!』


美月の声援が聞こえた。見ると、避難誘導をしながら俺を見上げている。


その時、敵の巨大な触手が美月に向かって伸びてきた。


「美月!」


俺は全力で飛び、美月の前に立ちはだかる。触手が俺の体を貫こうとしたその瞬間——


腕の文様が、これまでにない光を放った。光は俺の全身を包み、さらに街全体を覆う巨大なバリアとなった。敵の攻撃は全て跳ね返され、宇宙船はバリアにぶつかって爆発する。


しかし、その代償は大きかった。俺の体から力が抜け、美月の腕の中に倒れ込む。


『よくやった。約束通り、力は回収させてもらう』


アーキテクト・ゼロが現れ、俺の腕から文様を吸い取っていく。不思議なことに、力を失っても後悔はなかった。


「拓也、大丈夫?」


美月の涙で濡れた顔が俺を見つめている。


「ああ。もう普通の高校生に戻れるよ」


空には朝日が昇り始めていた。隕石が落ちてきたあの夜から、まるで夢のような三日間だった。


でも、美月を守れた。この街を守れた。それだけで十分だ。


『また会おう、勇敢な契約者よ』


アーキテクト・ゼロの声を最後に、全ては終わった。


エピローグ


一週間後、俺は再びゲームに熱中していた。隕石事件は「謎の爆発事故」として報道され、宇宙人のことは一切触れられていない。きっと政府が隠蔽したのだろう。


「拓也、朝ごはんよ」


美月が部屋に入ってきた。相変わらず俺の面倒を見てくれている。


「ありがとう」


俺は腕を見た。文様の跡はもうない。でも時々、あの三日間のことを思い出す。


「ねえ、美月」


「何?」


「もしまた宇宙人が来たら——」


美月は俺の唇に指を当てて、それ以上言わせなかった。


「その時はその時よ。でも今は、普通の高校生でいましょう?」


そうだな。今は、この平凡で温かい日常を大切にしよう。


でも、夜空を見上げる時、俺はまた星を見つめるようになった。いつかまた、あの光が降ってくるかもしれないと思いながら。


そして、その時は今度こそ、美月と一緒に——。

※この作品はAIで創作しています。