青空AI短編小説

パチンコで人生どん底だった俺が、気づいたら大手メーカーの右腕になっていた話

登録日時:2025-08-07 08:10:03 更新日時:2025-08-07 08:10:56

プロローグ ―どん底の夜―


俺の名前は田中健二、四十五歳。人生のどん底にいる。


コンビニで買った缶酎ハイを片手に、路地裏のブロックに座り込んでいた。八月の夜風が頬を撫でていく。暑いのか涼しいのかもよくわからない。感覚が麻痺している。


「またパチンコで負けちまった…」


今日も三万円溶かした。給料日までまだ一週間もある。いや、もう給料なんてない。会社はとっくにクビになった。理由?パチンコで遅刻と早退を繰り返したからだ。


家族も愛想を尽かした。嫁は子供を連れて実家に帰り、離婚届を突きつけてきた。親父は「もう顔も見たくない」と言って電話を切った。


何もかもが終わった。


缶を傾けて、ぬるい酎ハイを喉に流し込む。苦い。人生と同じくらい苦い。


そんな時だった。少し離れた場所で騒ぎが起きているのに気づいたのは。


第一章 ―運命の邂逅―


「金出せよ、ジジイ!」
「財布の中身、全部だ!」


若い男が三人、一人の中年男性を取り囲んでいた。典型的な恐喝だ。中年男性は上品なスーツを着ていて、どう見てもカモにされやすいタイプだった。


普段の俺なら見て見ぬふりをする。いや、絶対にそうする。関わったって碌なことにならない。それに今の俺には、他人を助ける余裕なんてない。


でも、その日は違った。


「社会から見放された俺が、せめてもの反発を…」


そんな自暴自棄な感情が胸の奥で煮えたぎっていた。どうせ人生終わってるんだ。もう失うものなんて何もない。


缶を道端に置いて、ふらつきながら立ち上がる。酔いが回っているのか、足元がおぼつかない。でも構わない。


「おい、やめとけって…」


俺が口にしたのは、そんな気の抜けた一言だった。自分でも情けないと思う。もっと格好いいことを言いたかったのに、出てきたのはそれだけ。


三人の男たちが振り返る。みんな俺より若い。二十代前半といったところか。金髪に染めた髪、派手な服装。いかにも不良という格好だ。


「あ?何だよオッサン、関係ないだろ」
「消えろよ、臭せえんだよ」


確かに俺は臭い。風呂にも満足に入ってない。服も何日も着っぱなしだ。


でも、もう後には引けない。


「その人から手を離せ」


今度はもう少しマシなことが言えた。声も震えていない。不思議だった。普段の俺なら絶対にできない。


「チッ、うぜえな」


一人がこちらに向かってくる。拳を握りしめている。やる気だ。


俺も拳を握る。いつ最後にケンカしたのかなんて覚えてない。中学生の時だろうか。勝てる気がしない。


でも、不思議と怖くなかった。むしろ、生きてる実感があった。久しぶりに血が騒いでいる。


男が殴りかかってくる。俺は咄嗟に身を捩って避けた。完全に避けきれず、頬を掠められる。痛い。でも、この痛みが妙に心地よい。


「おらあ!」


俺も反撃する。相手の腹部に拳をめり込ませる。手応えがあった。男がうめき声を上げて後ずさりする。


「やりやがったな、クソジジイ!」


残りの二人も向かってくる。三対一だ。勝ち目はない。でも構わない。どうせ人生詰んでるんだ。ここで死んでも誰も困らない。


そんな時だった。


ウーウーという音が響いてきたのは。パトカーのサイレンだ。


「やべ、警察だ!」
「逃げろ!」


三人の男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。あっという間に静寂が戻った。


俺はその場に立ち尽くしていた。何が起きたのかよくわからない。現実感がない。


「なんで俺、こんなことしちまったんだ…」


後悔の念が押し寄せてくる。警察に捕まるかもしれない。いや、きっと捕まる。もうどうでもいい。


そんな俺の前に、先ほどの中年男性が近づいてきた。


第二章 ―名刺という希望―


「ありがとうございました」


男性は深く頭を下げた。五十代後半といったところか。品のある顔立ちで、高そうなスーツを着ている。絶対に俺とは住む世界が違う。


「いや、別に大したことじゃ…」


俺は視線を逸らした。助けたとはいえ、相手は立派な人に見える。こんな汚い格好の俺が話しかけられる相手じゃない。


「いえいえ、本当に助かりました。もしあなたが現れなかったら、どうなっていたことか」


男性は俺の手を握った。その手は温かかった。人の温もりなんて久しぶりだ。


「あの、これを」


男性が差し出したのは一枚の名刺だった。真っ白な紙に、金の文字で社名が印刷されている。


『株式会社サンライズテック』


その名前を見た瞬間、俺の目が見開いた。知らない人はいない超有名企業だ。家電から自動車部品まで、幅広く手がける日本を代表するメーカー。テレビCMでも毎日のように見る。


そして、肩書きを見て更に驚いた。


『代表取締役社長 山田 誠一郎』


嘘だろ。あのサンライズテックの社長?


「嘘…ですよね?」


俺の声が裏返る。山田社長は苦笑いを浮かべた。


「よく言われます。こんな格好で夜中にうろついてる社長なんていませんよね」


確かにそうだ。なぜ社長がこんな時間に、こんな場所にいるんだ?


「実は、取引先との会食が長引いてしまって。タクシーを待っていたところを、あの連中に目をつけられたんです」


なるほど、そういうことか。運が悪かったということだ。いや、俺にとっては運が良かったのかもしれない。


「田中さん、でしたね」


「え?」


名前なんて名乗ってない。なぜ知ってる?


「警察の方から聞きました。身分証明書を見せたときに」


そういえば、警察が来てから事情聴取があった。俺はその場で事情を説明し、山田社長が証言してくれたおかげで無事に解放された。


「田中さん、もしよろしければ、今度お食事でもいかがですか?お礼をさせてください」


俺は困惑した。社長が俺みたいな人間と食事?冗談に決まってる。


「いや、俺なんかが…そんな」


「そんなことはありません。あなたは私の命の恩人です」


山田社長の目は本気だった。嘘をついているようには見えない。


「考えておいてください。連絡先を教えていただければ」


俺は携帯電話の番号を教えた。まさか本当に連絡が来るとは思わなかったが。


第三章 ―新たな人生の始まり―


三日後、本当に山田社長から電話がかかってきた。


「田中さんでいらっしゃいますか?山田です」


間違いなく社長の声だった。夢じゃない。現実だ。


「お約束通り、お食事をご一緒していただけませんか?」


俺は慌てた。まさか本当に誘ってくるとは。


「でも、俺、今失業中で…服装とかも…」


「構いません。気軽な格好で結構です」


山田社長が指定したのは、高級ホテルの中にあるレストランだった。俺には場違いすぎる場所だ。


でも、断る理由も見つからない。人生で初めて、こんな高級な場所に行ける機会だ。せめて、まともな服を着ていこう。


質屋に行って、昔のスーツを買い戻した。クリーニングに出して、靴も磨いた。髪も切って、ひげも剃った。鏡を見ると、少しはマシになったような気がする。


約束の日がやってきた。ホテルのロビーで山田社長を待つ。場違い感が半端ない。周りの人たちは皆、品があって金持ちそうだ。


「田中さん!」


山田社長が現れた。今日はカジュアルな格好だが、それでも高そうな服を着ている。


「すみません、お待たせしました」


「いえ、俺の方こそ…」


レストランに案内される。窓際の席で、夜景が一望できる。こんな景色を見ながら食事をするなんて、人生初だ。


「改めて、先日は本当にありがとうございました」


山田社長がワイングラスを持ち上げる。俺も慌てて真似する。


「乾杯!」


グラスが触れ合う音が響く。ワインの味なんてよくわからないが、きっと高いものなんだろう。


「田中さんは、普段はどんなお仕事を?」


来た。一番答えたくない質問だ。でも、嘘をつくわけにはいかない。


「実は…失業中なんです」


俺は正直に答えた。パチンコにはまって会社をクビになったこと、家族に見放されたこと、すべてを話した。


山田社長は黙って聞いていた。軽蔑するような表情は見せない。


「そうでしたか…大変でしたね」


「すみません、こんな情けない話で」


「いえ、そんなことはありません。むしろ、そんな状況で私を助けてくださったことに感動しています」


山田社長の表情は真剣だった。


「実は、私も若い頃は道を踏み外しそうになったことがあります。ギャンブルではありませんが、酒と女に溺れて、会社を潰しかけました」


意外な告白だった。こんな立派な人でも、そんな時期があったのか。


「でも、ある人に助けられて、今があります。だから、今度は私が誰かを助ける番だと思っているんです」


山田社長は俺の目を見つめた。


「田中さん、もしよろしければ、うちの会社で働いてみませんか?」


え?今、何と言った?


「え…でも、俺なんて学歴もないし、スキルも…」


「学歴やスキルなんて、後からついてきます。大切なのは人間性です。あの夜、自分の身を顧みずに私を助けてくださったあなたの勇気と優しさ。それこそが、うちの会社に必要なものです」


俺の目に涙が滲んだ。いつぶりだろう、誰かに認められるのは。


「本当に…いいんですか?」


「もちろんです。明日から来てください」


エピローグ ―右腕として―


あれから三年が経った。


俺は今、サンライズテックの営業部長をしている。山田社長の右腕と呼ばれるまでになった。


最初は雑用から始まった。お茶汲み、コピー取り、掃除。でも、俺は文句を言わなかった。こんな俺を雇ってくれた山田社長への恩返しだと思って、必死に働いた。


山田社長は俺の頑張りを見ていてくれた。少しずつ責任のある仕事を任されるようになり、気づけば営業の最前線に立っていた。


パチンコは完全にやめた。ギャンブルに使う金があるなら、自己投資に回す。本を読み、セミナーに参加し、資格を取った。


家族との関係も徐々に改善している。元嫁とはまだ復縁していないが、子供とは会えるようになった。親父も最近、「お前も変わったな」と言って笑ってくれる。


すべては、あの夜から始まった。


人生のどん底で、自暴自棄になって助けた一人の男性。それが俺の運命を変えた。


今でも時々思う。もし、あの夜に何もしなかったら、俺はどうなっていただろうか。きっと、路地裏で野垂れ死んでいたかもしれない。


山田社長は俺によく言う。


「人生に遅すぎるということはない。大切なのは、今この瞬間にどう行動するかだ」


その通りだ。俺は四十五歳で人生をやり直した。今では、後悔なんてしていない。


むしろ、どん底を経験したからこそ、今の幸せがより輝いて見える。


パチンコで人生どん底だった俺が、気づいたら大手メーカーの右腕になっていた。


これが俺の物語だ。

※この作品はAIで創作しています。