青空短編小説

地球の囁き

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あらすじ

高校生のソラは幼い頃から地球の声が聞こえる特殊な能力を持つ。ある日、地球から大災害の警告を受け取るが誰も信じてくれない。友人の美咲の支援を得て「天気予報少女」として活動を始め、的確な予測で信頼を築く。ついに大災害が発生するが、事前の警告により多くの命が救われ、ソラは地球と人間の共生を目指す活動を続けていく物語

第一章 聞こえる声


「今日も聞こえてる…」


高校生のソラは、通学路の歩道橋の上で立ち止まった。朝の通勤ラッシュで賑やかな街の音の向こうから、いつものように「あの声」が聞こえてくる。


それは幼い頃からずっと聞こえ続けている、地球の声だった。


風が頬を撫でていく時、木の葉が揺れる音に混じって、川のせせらぎに重なって、そして街の喧騒の奥底で、いつも響いている優しい囁き。今日の地球は機嫌が良さそうだ。春の陽気な日差しのように、暖かく包み込むような声が聞こえる。


「ソラちゃん、また一人で何してるの?」


振り返ると、同じクラスの美咲が不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「あ、えっと…ちょっと景色を見てただけ」


「景色って、毎日同じ道でしょ?もしかして彼氏でも探してるの?」


美咲はにやにやと笑いながら近づいてくる。ソラは慌てて首を振った。


「違うよ!そういうんじゃないから」


「ふーん、まあいいけど。急がないと遅刻するよ?」


二人は歩道橋を降りて学校へ向かった。美咲はおしゃべりが好きで、昨日見たドラマの話や、今度の文化祭の準備の話を楽しそうに話している。ソラは相槌を打ちながらも、心の片隅で地球の声に耳を澄ませていた。


普通の女子高生として振る舞うのは難しい。地球の声が聞こえるなんて、誰かに話したところで理解してもらえるはずがない。きっと変な子だと思われて、避けられてしまうだろう。


だから、この秘密は誰にも言えない。


第二章 異変の始まり


それは数学の授業中に起こった。


ソラは黒板の連立方程式を写していた時、突然激しい頭痛に襲われた。ノートを持つ手が震え、ペンが床に落ちる。


そして、聞こえてきた。


これまで聞いたことのない、深い絶望と悲しみに満ちた地球の叫び声が。


『助けて…』


『痛い…』


『みんな…死んでしまう…』


ソラの顔から血の気が引いた。地球の声がこんなに苦しそうなのは初めてだった。いつもは優しく包み込むような暖かい声だったのに、今は嵐のような、まるで世界が終わるかのような絶叫が響いている。


「天野さん、大丈夫?」


先生の声で我に返る。クラス全員がこちらを見ていた。


「あ、すみません。ちょっと気分が…」


「保健室に行く?」


「いえ、大丈夫です」


ソラは慌てて首を振ったが、心の中では地球の悲鳴が響き続けていた。そして、その中から明確な言葉が聞こえてきた。


『来年…この星に巨大な傷がつく…多くの命が失われるだろう』


災害の警告だった。


放課後、ソラは一人で屋上に向かった。夕日が街を染める中、彼女は地球の声に必死に耳を傾けた。


「もう少し詳しく教えて」


地球は答えてくれた。かすかに、とても弱々しく、でも確かに。


『大きな揺れ…海が怒る…空が泣く…多くの場所で同時に…』


地震、津波、台風、そして複数の災害が同時多発的に起こるということなのか。ソラの手が震えた。


これは予言ではない。地球からの警告だ。


そして、この警告を世界に伝えなければならない。


第三章 誰も信じない警告


「地球の声が聞こえるって?」


家に帰って夕食の時、ソラは思い切って両親に打ち明けた。しかし、父親は困ったような顔をして母親を見た。


「ソラ、最近疲れてない?受験のストレスとか…」


「違うの!本当に聞こえるの。そして来年、大きな災害が…」


「ちょっと、ソラ」


母親が優しく手を伸ばしてきた。


「心配になるようなことを言わないで。きっと勉強のしすぎよ。今度の休みに病院に…」


「病院?私は病気じゃない!」


ソラは立ち上がった。やっぱりだ。家族でさえ信じてくれない。


「お父さんもお母さんも、私の話を聞いて!来年、本当に大きな災害が起こるの。地球が教えてくれたの」


「ソラ、落ち着いて」


父親が困惑した表情で言った。


「君は優しい子だから、環境問題とかニュースを見て心配になってるんだろう。でも、地球の声が聞こえるなんて…」


「非科学的だって言いたいんでしょ」


ソラは部屋に駆け上がった。ドアを閉めて、ベッドに倒れ込む。


やっぱりダメだった。一番身近な家族でさえ、自分の話を信じてくれない。


でも、諦めるわけにはいかない。


翌日から、ソラは行動を開始した。まずはインターネットで情報を発信することにした。匿名のブログを作り、地球から受け取ったメッセージを詳細に書いた。


『来年、複数の自然災害が同時に起こります。これは地球からの警告です』


しかし、反応は予想通りだった。


「また中二病の子が現れたw」


「地球の声って何それ、アニメの見すぎでしょ」


「こういう偽の予言で不安を煽るのやめてもらえます?」


コメント欄は嘲笑と批判で溢れた。ソラの投稿は、すぐにフェイクニュースとして報告され、削除されてしまった。


SNSでも同じだった。ツイッターやインスタグラムで警告を発信しても、誰も真剣に受け取ってくれない。むしろ、「変な子」として晒し者にされてしまった。


学校でも噂になった。


「天野さん、地球の声が聞こえるんだって」


「やばくない?病院行った方がいいよ」


「近づかない方がいいかも」


クラスメイトたちがひそひそと話しているのが聞こえる。美咲だけは心配そうにソラを見ていたが、何も言わなかった。


第四章 孤独な戦い


一週間後、ソラは図書館で気象学や地震学の本を読み漁っていた。地球の声だけでは信じてもらえない。科学的な根拠が必要だ。


「異常気象の前兆現象」「地震予知の可能性」「動物の異常行動と災害の関連性」


本の山に埋もれながら、ソラは地球の声が示すわずかなヒントを解読しようとしていた。そして気づいた。最近、確かに小さな異変が起き始めている。


普通なら気づかないような、微細な地殻変動。季節外れの気温変化。渡り鳥のルートの変化。海水温の微妙な上昇。


これらは全て、地球が事前に教えてくれていたことだった。


ソラは記録を取り始めた。地球の声が教えてくれる小さな変化を全て書き留めて、それが実際に起こるかどうかを確認していく。


「今日の夕方、東の空に変わった雲が出る」


その通りだった。気象庁の発表よりも3時間早く、ソラは天候の変化を予測できた。


「明日の朝、震度1の地震が起こる」


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