青空AI短編小説

人間椅子 ~継承者~

登録日時:2025-07-10 05:12:01 更新日時:2025-07-10 05:12:01

第一章 古い椅子の謎



昭和三十年、東京の古い洋館で骨董商を営む私、田中修一は、奇妙な依頼を受けた。依頼主は品川区に住む未亡人、佐藤綾子という女性だった。



「先日、主人の遺品を整理していたところ、応接間にある古い椅子から、不思議な手紙が見つかったのです」



綾子は震える手で一通の封書を差し出した。封筒には「人間椅子の秘密」と書かれていた。



「この椅子は、主人が戦前に購入したものです。でも最近、夜中に軋む音がするようになって…まるで中に人が入っているかのような」



私は椅子を見に行くことになった。佐藤家の応接間に置かれていたのは、確かに見覚えのある椅子だった。深い紫色のビロードに包まれ、重厚な木製の枠組みを持つ、まさに人が一人入れそうな大きさの安楽椅子。



第二章 隠された真実



手紙を開くと、そこには驚愕の事実が記されていた。



「私の名前は山田太郎。昭和七年、この椅子の中に身を隠し、愛する女性の日常を見守り続けた男である。しかし、時は流れ、私の肉体は朽ち果てた。だが、私の意志は、この椅子に宿り続けている。



そして今、新たな継承者を求めている。この椅子に座る者は、やがて私と同じ運命を辿ることになるだろう。美しき女性への愛、それが全ての始まりなのだ。」



綾子は顔を青ざめた。



「主人は毎晩、この椅子に座って読書をしていました。そして亡くなる前の数日間、まるで別人のようになって…」



私は椅子を詳しく調べた。すると、座面の下に巧妙に隠された空間を発見した。そこには、人一人がぎりぎり入れるほどの空洞があった。そして、古い骨の破片と、もう一通の手紙が。



第三章 連鎖する狂気



二通目の手紙は、佐藤氏の筆跡だった。



「私は山田太郎の意志を継いだ。この椅子には不思議な力がある。座る者の心に、純粋で狂気的な愛を植え付けるのだ。私は妻への愛に取り憑かれ、ついにはこの椅子の中に身を隠すことを選んだ。



妻は私が死んだと思っているだろう。しかし、私は今でも彼女を見守っている。そして、次の継承者を待っている。」



私は戦慄した。この椅子は、代々の所有者を狂気の愛に駆り立て、最終的には椅子の中に閉じ込めてしまうのか。



綾子は涙を流しながら言った。



「主人は最後の夜、『君をずっと見守っていよう』と言って、この椅子に座ったまま姿を消したのです。翌朝、椅子には誰もいませんでした。でも、夜中に聞こえる音は…」



第四章 選択の時



私は椅子を処分することを勧めた。しかし、綾子は首を横に振った。



「もし、主人が本当にこの椅子の中にいるのなら…私は彼と共にいたい」



その夜、私は佐藤家に泊まることにした。真夜中、応接間から微かな音が聞こえてきた。椅子の軋む音、そして囁くような声。



「愛している…愛している…」



私は恐る恐る応接間を覗いた。すると、椅子に座る綾子の姿があった。彼女は恍惚とした表情で、空中に向かって微笑んでいた。



「あなた、やっと会えましたね」



綾子は私を見て言った。



「主人がここにいるんです。この椅子の中に。そして、私も…」



終章 永遠の愛



翌朝、私は空になった椅子を発見した。綾子の姿はどこにもなかった。しかし、椅子の座面には、新しい手紙が置かれていた。



「私たちは永遠に結ばれました。この椅子は、真の愛を求める者を待っています。あなたも、いつかきっと…」



私は急いで椅子を倉庫に運び、厳重に封印した。しかし、時折、静寂の中で聞こえてくる。



椅子の軋む音と、愛を囁く声が。



そして私は知っている。いつか、この椅子に座る日が来ることを。愛する人への想いが、理性を超えるほどに強くなった時、私もまた…

※この作品は、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で公開されている以下の作品を利用して、AIで創作しています。

原作小説

原作小説名
人間椅子
原作作者
江戸川 乱歩
青空文庫図書URL
https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card56648.html