青空AI短編小説

光る石

登録日時:2025-07-08 06:24:40 更新日時:2025-07-08 06:24:40

「お父さん、あの石、また光ってるよ。」


小さな蟹の兄弟のうち、弟が水底の奥を指さしました。そこには青白い光を放つ不思議な石が、水草の陰でひっそりと輝いていました。


「ああ、あの石かい。」お父さん蟹は大きなはさみでひげを撫でながら答えました。「あれはな、昔からここにあるんだ。月の光が強い夜にだけ光るのさ。」


兄の蟹は興味深そうに目を輝かせました。「お父さん、あの石に近づいてもいい?」


「だめだよ。」お父さんは首を振りました。「あの石の周りには強い流れがあるんだ。君たちにはまだ危険すぎる。」



不思議な出会い


しかし、好奇心旺盛な兄弟は、ある日こっそりと光る石に近づいてみることにしました。お父さんが昼寝をしている間に、そっと巣穴を抜け出したのです。


「クラムボンも一緒に来るかい?」弟が水中を漂う小さな泡たちに声をかけました。


「クラムボンは笑ったよ。」


「クラムボンは踊ったよ。」


泡たちは楽しそうに答えて、兄弟の後をついてきました。


石に近づくにつれて、水の流れが強くなってきました。しかし、不思議なことに、その光に照らされると、兄弟の体が軽やかになったのです。



石の秘密


「この石、温かいね。」弟が石に触れると、そこから美しい音色が響きました。それは水琴窟のような、澄んだ音でした。


すると、石の中から小さな光の粒がたくさん舞い上がりました。それらは音に合わせて踊るように水中を漂い、やがて川面へと昇っていきました。


「あの光たち、どこへ行くんだろう?」兄が呟きました。


そのとき、頭上から甘い香りが漂ってきました。見上げると、やまなしの実が水面に浮かんでいるのが見えました。


「あ、やまなしだ!」


兄弟は手を取り合って、ゆっくりと水面に向かって泳いでいきました。光る石から放たれた光の粒たちが、まるで道しるべのように二匹を包み込んでいました。



やまなしの贈り物


水面近くまで上がってくると、やまなしの実が金色に輝いているのが見えました。それはまるで、光る石の力を受けて特別な実になったかのようでした。


「これを持って帰ろう。」兄が言いました。「きっとお父さんも喜ぶよ。」


二匹は協力してやまなしの実を運び、光る石の前まで戻ってきました。不思議なことに、やまなしの実もまた淡い光を放ち始めました。


「クラムボンも喜んでるよ。」


「クラムボンも光ったよ。」


泡たちも嬉しそうに歌いながら、兄弟の周りを舞い踊りました。



帰り道


家に帰ると、お父さんは心配そうに待っていました。


「どこへ行っていたんだい?」


「光る石を見に行ったんだ。」兄が正直に答えました。「そしてこれを見つけたよ。」


やまなしの実を見せると、お父さんの目が大きくなりました。


「これは...特別なやまなしだね。光る石の力を受けた実だ。」


お父さんは優しく微笑みました。「君たちは勇敢だったね。でも、今度からは一人で危険な場所に行かないと約束してくれるかい?」


「約束するよ、お父さん。」


その夜、三匹は特別なやまなしの実を分けて食べました。それは今まで味わったことのない、甘くて不思議な味がしました。食べ終わると、みんな幸せな気持ちで眠りにつきました。



新しい伝説


それから毎月、満月の夜になると、兄弟は光る石を遠くから眺めるようになりました。そして時々、石の周りに新しいやまなしの実が現れることを発見しました。


「きっと光る石は、川の生き物たちを見守ってくれているんだね。」弟が言いました。


「うん。僕たちも、いつかあの石を守る役目を担うんだろうね。」兄が答えました。


クラムボンたちも、今日も楽しそうに川底で踊っています。光る石の優しい光に包まれながら、小さな生き物たちの平和な日々は続いていくのでした。


川は今日も静かに流れ、やまなしの実は季節になると甘い香りを運んでくれます。そして光る石は、月夜の晩に今も優しく輝いているのです。

※この作品は、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で公開されている以下の作品を利用して、AIで創作しています。

原作小説

原作小説名
やまなし
原作作者
宮沢 賢治
青空文庫図書URL
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card472.html