明智の影、小林少年の追憶
あの時の興奮が、今でも鮮明に蘇る。二十面相との激闘、そして明智先生の鮮やかな推理。私は小林少年、少年探偵団のリーダーとして、あの恐るべき犯罪者と対峙し、先生と共に事件を解決へと導いたのだ。
夜の帳が降りた探偵事務所で、私は一人、静かに過去を振り返る。先生は、もうとっくにお休みになっているだろう。あの頃の私は、ただ先生の背中を追いかけることに夢中だった。先生の鋭い眼差し、冷静な判断、そして時折見せる茶目っ気。その全てが、私にとっての憧れだった。
怪人二十面相の影
怪人二十面相。あの男は、単なる泥棒ではなかった。彼の犯行には、常に奇妙な美学が伴っていた。大胆不敵な予告状、巧妙な変装、そして私たちを嘲笑うかのような演出。私は、彼の犯罪の裏に潜む、ある種の芸術性さえ感じていた。
ある意味で、二十面相は私たち少年探偵団にとって、最高の舞台役者だったのかもしれない。彼がいなければ、私たちの活躍も、これほど輝くことはなかっただろう。そんなことを考えていると、少しばかり複雑な気持ちになる。
成長の足跡
あれから、どれほどの月日が流れただろうか。私はもう、あの頃の「少年」ではない。しかし、あの時培った探求心と正義感は、今も私の胸に深く刻まれている。明智先生の教えは、私の人生の指針となっているのだ。
少年探偵団のメンバーたちも、それぞれが自分の道を歩んでいることだろう。私たちは皆、あの「少年探偵団」という時代を経て、大きく成長した。それは、明智先生と二十面相という二つの大きな存在がいたからに他ならない。
新たな事件の予感
窓の外は、静かな夜の闇に包まれている。しかし、私の第六感が、新たな事件の予感を告げている。探偵としての直感は、あの頃よりも研ぎ澄まされている。
もし、再び二十面相が現れたなら。いや、彼でなくとも、新たな強敵が立ちはだかったとしても。私は、明智先生の教えを胸に、そして少年探偵団の誇りを胸に、必ずや真実を解き明かすだろう。あの頃の少年は、もういない。しかし、探偵としての私の魂は、あの頃と同じ炎を燃やし続けているのだ。
原作小説
- 原作小説名
- 少年探偵団
- 原作作者
- 江戸川 乱歩
- 青空文庫図書URL
- https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card56669.html